何故こんなにも愛しいのだろう。
ベッドに腰掛け、あお向けに寝ている五右ェ門の髪を撫でながら、ふと泥棒は思う。
スースーと寝息を立てている五右ェ門に、ルパンは布団をそっと掛けてやった。
そして、ルパンは五右ェ門の顔をじっと見つめた。
長い睫、白い肌、紅い唇、スッと通った鼻筋…。
どれもこれも男のそれとは信じがたい程に美しくて綺麗だった。
額に唇を寄せてチュッと音を立てると、五右ェ門は「ん…」と身をよじった。
その仕草は…いけなかった。
ルパンはこれ以上耐えられそうにない事を即座に悟り、五右ェ門を起こそうとした。
「五右ェ門、五右ェ門ちゃん。」

四度目の呼びかけで、ようやく五右ェ門は起きた。というか飛び上がった。
自分がいることを認識すると、みるみるうちに五右ェ門の顔は紅くなった。
その様子を見て、ルパンはとても嬉しかった。
いつも一緒に居るのに、どこかまだ近寄りがたい部分があって、何を考えているのか、何を思っているのか分からず、歯痒い思いをした事もあった。
そんな様子の彼が、眠れなくなる程に自分の事を考えてくれていた。
その事実だけでルパンは幸せになれた。
頬に手を当てればますます紅くなり、あまりにも分かりやすく強がってみせたりする彼の様子に少し笑ってしまった。
思わず彼が嫌っている笑顔が出そうだったので、彼の見ていないところで、笑った。
ルパンは、幸せだった。




 








後書き
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まだまだ続きますよー!
ここで第一部は一応終了です。次回から第二部に入ります。