車を飛ばして間もなく、とある町外れの錆びれた建物に着いた。
おそらく五右ェ門はここに捕らわれている。ネズミの手によって。
ルパンは車のドアをバタリを閉め、斬鉄剣を強く握りしめた。


「うぐっ…!!」
五右ェ門のうめき声がかすかに、だが確かに部屋から聞こえてきた。
ルパンは部屋の扉の前に立ち、感情に捉われぬようひとつ深呼吸してからドアノブを握った。
ネズミ族も決して弱くない。
あの五右ェ門が捕らわれるくらいなのだ。
怒りに任せて冷静な判断を失えば、五右ェ門を助けるどころか逆にこちらがやられてしまう。
ドアノブを回し、扉を開けてルパンは愕然とした。
壁にはりつけになっているのは誰だろう。
愛しい人の変わり果てた姿に、ルパンの背筋に寒気が走った。
熱湯でもかけられたのだろうか、全身に酷い火傷を負っている。
腹にはムチの痕がミミズ腫れとなり、何より酷かったのは切り傷だった。
五右ェ門の足元にポタポタと音を立てて落ちる血の雫…。
赤い色、白い肌、黒い陰謀…。
ルパンの心に黒い思いが広がっていく。しかしルパンは冷静だった。
何も言わず、ただ目つきだけは鋭かった。
それは、本当に心の奥底から怒っているときの怪盗の姿だった。
町外れの天気はすぐにまた黒い雲を引き寄せ、激しい雷を放ちだした。
雨の音が大きくなる。激しい雷が地に落ちる。

世界一の泥棒は、天気すらも操るのか、とネズミは含み笑いをしてみせた。
「(恐ろしい男だ…ますます生かしてはおけんな…)」
雷鳴轟く中、ネズミはルパンの前に姿を現した。
「やぁ、いらっしゃいルパン三世。」
窓の外で雷が、ピシャリと鳴って地に落ちた。



 








後書き
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まだまだ続きます。
拷問の場面の表現は控えめにしたのですが、苦手な方は申し訳ありません…。