「……。うちの五右ェ門が世話になったみてぇだな。」
いつもより低い声。しかし、五右ェ門に告白した時のそれとは天と地ほども違うものだった。
「全く…てめぇは良い部下を持ったもんだな。」
ネズミが口元だけ笑って言う。目には微かに怒りの感情が見て取れた。
やはり五右ェ門は何も言わなかったらしい。
「部下じゃねぇよ、相棒さ。」
ルパンもまた口元だけ笑って言ってみせた。
そして、その言葉を聞き、ネズミは五右ェ門にゆっくりと歩いて近づいた。
「しかしまぁ、美しいものが汚れるさまは何とも言えないね。」
床に広がっている五右ェ門の血を人差し指にすくい上げ、それを気絶している五右ェ門の頬にツツ…とぬった。
「俺たちのようなうす汚れたネズミにしか分からねぇか。」
ネズミが嫌な笑いを見せる。五右ェ門の白い肌は赤く汚れた。
「返してもらおうか。俺の大事な相棒を。」
ルパンがその言葉を言った途端、ルパンの全身から一気に殺気が溢れ出た。
ネズミは目を見開く。
恐怖で一瞬身体がこわばったその瞬間、ひときわ大きな音を鳴らして雷が落ちた。
その音と……同時に。
ネズミの命は。
消えた。

「さっすが相棒。」
ルパンが微笑みながら言う。
先ほど放った殺気は、どこかに消え去っていた。
柱の影に隠れていた次元が、ひょいと姿を現した。
手には、弾が一つ減った拳銃。
雷の音と同時に次元が銃で撃った弾は、ネズミの腹を突き抜けて壁にめり込んでいた。
「他の奴らも殺しておいたぜ。ほら、お前の銃。」
次元がひょいと投げ渡す。

ネズミを撃ったのは次元。
そして、ネズミを殺ったのはワルサーP38だった。



 








後書き
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まだまだ続きます。
ワルサーP38という響きが好きです。格好良いなぁ…。