彼の部屋、入ってすぐ正面に見える窓。
西向きでやけに細長い窓から差し込む月光はやけに明るかった。
その月明かりを背に受けながら真っ直ぐに立つその宝は、とても……美しかった。

「どうしたんだ?ルパン…こんな時間に…」
月光の中でその人は、首をかしげながら尋ねてきた。
「いや、まぁたまには二人でお話しようかなー…なんて」
軽い雰囲気で言葉を吐き出す。まるで女などをナンパでもしている感覚…。
いきなりこんな事を言うなんて自分でもおかしいって分かってるけどさ…。
「…そうか…。」
多少訝しがりながらも、了承し、受け入れてくれた。
あ、こいつ今絶対『まぁルパンがおかしいのはいつもの事か。』なぁんて思ってんだろうな。
「そっれにしても、相変わらず何も無ぇ部屋だなぁ…。」
ルパンが五右エ門の部屋を見回し、苦笑まじりに呟いてみせる。
五右エ門が部屋にごちゃごちゃと家具を置いたりしない事など、とうの昔から知っているくせに。
でも、つい彼の反応が欲しくて、からかってみせたりする。

『お前にこの気持ち、分かるか?いや、分からねぇよな…。お前はいつだって一人黙って目を瞑って、俺らとは何処か別の世界に…「別に良いだろう。」

ルパンが一人考え込んでいる間に、ふいに返事は返ってきた。
五右エ門の顔を見れば、少しむくれているようだ。

『可愛い。』

思わず声に出しそうになって、慌てて喉の奥に引っ込めた。
そんな言葉を五右エ門に向ければ、返ってくる返事はたった一つ、『斬る!!』だから。
「ま、お前らしいといえばお前らしいけどねー。」
殺風景な部屋にたった一つある家具らしい家具――ベッドに腰掛けながら、ルパンは五右エ門に笑ってみせた。



 





後書き
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まだ続きます…。
月と五右エ門、ありきたりですが凄く好きな組み合わせです。