一つのことに集中すると周りが見えなくなるのは、昔からの悪い癖だった。
それは逆に、五右ェ門の集中力の高さを物語っていたのだが、ネズミに捕らえられた今となっては、そのことさえも恨めしく思えてしまった。
「こんにちは、五右ェ門。」
ネズミがいやらしく笑いながら、その姿を現した。
五右ェ門は既にネズミの手下どもの手によって傷だらけだった。
「用件はなんだ。」
冷たい声で五右ェ門が言う。ネズミが笑う。
「勿論ルパンの事だよ。」
「ルパンは来ないぜ。」
五右ェ門がニィと笑って言ってみせた。
「何?」
ネズミが少し表情を歪め、五右ェ門にゆっくりと近づいた。
「ルパンが来ないとはどういう事だい?」
ネズミが五右ェ門の顎を持ち、尋ねた。
「俺をおとりにしようったって、そうはいかねぇぜ。ルパンはあいにく仕事中だ。こんな俺を助けに来たりなどしない」
五右ェ門が笑いながら、しかし確信をもってそう言った。
「じゃあ、代わりに何か情報を頂こうか。」
ネズミは五右ェ門の顎から手を離し、手下を見てクイと親指を五右ェ門に向けた。
すると、手下達は黙って頷き、五右ェ門への拷問を再開した。

五右ェ門はただその拷問に耐えるのみだった。
ただ、五右ェ門は自分の不甲斐なさを嘆き、そして出来ればルパン達には来て欲しくないと思った。



 








後書き
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まだまだ続きます。
五右ェ門の『一つの事を考えると行く道を塞ぐものを全て斬ってしまう』という癖(ルパン談)って凄く可愛いと思います。