サァァァァ……という水音が響く地面。
水溜りがあちこちに広がっていて、そのうちの一つを五右ェ門はパシャリと音を立てて踏んだ。
白いモヤの中、五右ェ門は天を仰いだ。
明け方の、薄暗くて白い世界が広がっていた。
日の出まで、あと半時ほど。ひんやりとした空気が五右ェ門の頬を撫でた。
ブルリと一つ身震いをして五右ェ門が再び歩き出そうとしたその時、不意に背後から呼び止められた。
「五右ェ門!」
振り返れば、白いモヤの中から姿を現した人物に五右ェ門の心はチクリと痛んだ。
「……ルパン…。」
ルパンは息を切らし、どうやらこの雨の中走って来たようだった。
向かい合わせの二人の間には、小さな水溜りが雨で歪みながらも二人の姿を映し出していた。
「何処…行くんだよ、五右ェ門。」
微かに怒りの感情を含め、ルパンは五右ェ門に問う。
「……修行だ。」
五右ェ門は下を向いてルパンの顔を見ずに答える。
「その怪我でか?」
ルパンの言葉にはだんだんと怒りが増しているように思える。
「じきに治る。」
五右ェ門はやはり下を向き、右手で左腕を不安そうに握りしめながら答える。
「だったら何でこんな手紙置いて行くんだよ!!」
ルパンは激しく怒鳴った。
右手には五右ェ門が書いた置手紙がクシャクシャになって握りしめられていた。
「それは…。」
五右ェ門は目を閉じ、ギュっと左腕を握りしめる右手の力はより強くなった。
『今まで有難う、世話になった。さようなら』
五右ェ門の丁寧な字で書かれたその言葉は、明らかに別れの言葉だった。



 








後書き
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まだまだ続きますー!
この話は今までで一番書くのが辛かったです…。