ルパンは五右ェ門に歩み寄り、五右ェ門の胸ぐらをグイと掴んだ。
水溜りがバシャリと音を立て、水が弾け飛んだ。
「答えろよ!五右ェ門!!なんでだよ!!!」
普段はあまり怒らないルパンが、これ程までに怒りをあらわにしてみせても、五右ェ門はやはり下を向いたままだった。
雨は止む気配がない。
「なんでだよ……。」
ルパンの手はゆるゆると力が弱まり、掴まれた胸ぐらは次第に解放されていった。
ルパンは五右ェ門の左肩にポンと自分の額をのせ、五右ェ門の右肩を左手で掴んだ。
それでも尚、五右ェ門は黙ったままだった。表情も全く変わらない。
いっそ嘘をついた方が楽なのだろうか、と五右ェ門は天を仰いだ。
雨が五右ェ門の顔に降る。五右ェ門はズキズキ痛む心を無視して言葉を放った。
「ルパン…俺はお前の気持ちに応えてやれない…。」
左肩のルパンが大きくビクリと体を強張らせた。
ルパンは顔を上げ、五右ェ門の瞳を真っ直ぐ見つめた。
嘘がバレてしまいそうで、五右ェ門はとても怖かった。
悟られてはいけない、この想いは。
自分が彼の側にいては、彼の足手まといになるだけ。
自分がいない方が、ルパンにとっては―――幸せなのだ…。
「それが…理由なのか?」
ルパンの顔はクシャリと歪んでいて、五右ェ門の心はまたズキリと痛んだ。
「悪いが…もう…ルパンとは居られない…。」
壊れそうな心を、溢れそうな涙を、こらえて五右ェ門は嘘をつく。
一世一代の嘘をつく。
「そう…か…。」
ルパンの手はゆっくりと五右ェ門から離れていった。
日が東の空から顔を出したが、空には黒い雲が広がっていて太陽の光が地を照らすことはなかった。
明日の明け方には雨が止むなどと、天気予報が嘘をつき、雨の音が二人の心を裂いた。
白いモヤが強く濃くなっていく―――。
五右ェ門がルパンに背を向けて、白い世界に溶けていく。
嗚呼――目の前の君は――雨の中――消えていった――。



 








後書き
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まだまだ続きますー!
両想いだからといって必ずしもくっつくわけではないのです。