俺は仕事に幾つかポリシーというものをもっている。
人は殺さない、女を泣かせない、そして―盗む前には予告状を出す。

「好きだ、五右エ門。」

薄暗い部屋の中で、予告状が静かに響き渡った。

「…っ。」
返す言葉が見当たらないという風に、五右エ門は下を向き目を伏せてしまった。
ルパンはそんな五右エ門の横顔を見ながら、月光によく映える白い肌や長い睫を、とても美しいと思った。

「あの…その…ルパン…」
少しうろたえた様子で、言葉をつむぐ。
普段なら絶対に見せない五右エ門の仕草に、ルパンはとても…惹かれた。

「―――――っ!!」

五右エ門が息を呑む。この薄暗い部屋では何が起こったのか、にわかに理解出来ない。
廻された腕、耳元にある頭、感じる体温、息遣い…。
ルパンは五右エ門に抱きついていた。
言葉に信ぴょう性を持たせる為でなく、体が勝手に動いていた。

ただ、愛しかった―。

あんなに真っ直ぐで、凛として、何事にも揺るがなかった愛しき人が自分の言葉一つであんなにも動揺するなんて…。
と、同時に自分の言葉がきちんと相手に伝わった事が嬉しくて、ルパンにしてみれば抱きつかざるを、えなかった―。
そして、また突然その男は行動を起こした。
「じゃっ、そんだけだから。」
そう言って抱いていた手をぱっと離し、立ち上がり、さっさと部屋を出て行ってしまった。

本当のところ、あのまま押し倒して口付けたかったが、それでは長年の計画が全てお終い。
本能を必死に理性で抑え、どうにか計画の第一段階を無事に遂行してみせた…。



 







後書き
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まだ続きます…。
うろたえた五右エ門が見てみたい…っ!