「ふぅ…。」
五右ェ門の部屋のドアをバタリと閉め、ルパンはそのままドアにもたれかかった。
危なかった…。本当に危なかった――。
あんな五右ェ門初めて見た…。凄く、可愛かった……。

「よぉ、あんまり意味の分からない事するなよ。」
突然暗闇から声がした。しかし、ルパンは全く驚かなかった。
「お前ずっとそこで聞いてたろ。」
暗闇の一点を睨みつけ、ルパンは冷たく言い放った。
「聞いてたんじゃねぇ、聞こえたんだ。」
ルパンがパチン、と近くにあった電気のスイッチを押す。
すると、それまで暗闇だった世界が急に明るくなって、その声の主の姿が現れた。
パイプ椅子に座っている次元は、帽子をかぶり直した。
「どっちも同じだろ。」
ルパンが不満そうに悪態をつきながら、側にあるソファにドサッと座り込んだ。
「何で返事を聞かねぇんだ。」
次元がふいに尋ねてくる。
それは多分五右ェ門も疑問に思っている事だった。
「今のはね、予告状。これから盗むのさ。」
ルパンが得意気に話してみせる。
「盗むって何をだ。」
「五右ェ門ちゃんの心だよ。」
クサい台詞だ…。しかしこの男が言うと何とも格好がつくのは何故だろう…。
次元は同じ男として少し悔しくなった。
「多分今返事を訊いても答えはNOだ。理由は男だから。もし仮にOKだとしてもそれは俺への同情。本心じゃねぇのさ。」
言い終わってルパンはウィンクしてみせた。
「それにしてもあれじゃあ五右ェ門はただ悩むだけだぜ?」
次元が呆れ気味に返事をする。いつの間にか煙草を吸っていた。
「それで良いのさ。今はね。」
ルパンはどこか確信をもった顔で微笑む。
その笑顔を見て次元は少しムッとした。
「あいつを泣かせたりしたらいくらお前でも許さねぇからな。」
タバコの煙を吐きながら低い声で言う。
そんな次元を見て、ルパンは苦笑してみせた。
「分かってるよ、相棒。」
次元はまたタバコを吸い、ルパンは天井を見上げた。
明るい電気に一匹の蛾が吸い寄せられていた。






 








後書き
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まだまだ続きますよー!
(この話は後書きに何を書いたら良いのか分からない…)