煙草を消して座りながら目を閉じ、神経を尖らせて闇に耳を立てる。
本当はこんなことをするべきではない事は分かっていたが、せずにはいられなかった。
その時、この感情の答えがふと降ってきた。
こんな事するなんて、まるで娘が心配な父親のようだ、と。
その答えに我ながら笑ってしまった。が、しかし妙に納得がいく。
この感情が本当にそうなら、父親の俺に出来ることはただ一つ。
大事な子供を守るだけだ。
ルパンが五右ェ門の部屋から出てきてすぐ、俺はそいつに声をかけた。
「よぉ、あんまり意味の分からない事するなよ。」


それから幾つか会話を交わした。
奴はとにかく余裕ぶっていたが、俺にはきちんと分かっていた。
余裕なんて本当はねぇ上に、自分を理性で抑えるのに必死だ。
そんな奴に少し俺は呆れた。そして煙草に火をつけながら言った。
「それにしてもあれじゃあ五右ェ門はただ悩むだけだぜ?」
「それで良いのさ。今はね。」
そう返事して奴は笑ってみせた。そんな奴の態度に俺は少しムッとした。
「あいつを泣かせたりしたらいくらお前でも許さねぇからな。」

だって俺の役目は五右ェ門を守ることだから。
そして、お前の相棒だから。
お前らの恋を邪恋だと言う奴がいたならば、俺がそいつを撃ってやろう。
世間は俺らを嫌っているが、世間はお前の神のような手捌きを知らない。
お前は幸せになるべきだ――五右ェ門と、共に。
だがお前が五右ェ門を不幸にしたら、その時は遠慮なくお前を撃つぜ、ルパン。

その姿は神に似て、しかし世間には汚らわしいとされる。
蛾の美しさも知らず、美しさを保つ明かりの強さも知らず、世間は見た目だけでものを言ってみせる。

『俺にはお似合いだと思うぜ。』

大きな机の上の灰皿でくすぶっているタバコの煙が、明かりに吸い寄せられながら呟いた。



 







後書き
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最初の予定では、次元の回想は一ページの予定だったんですが、あまりにも次元を書くのが楽しかったので二ページになりました…。